ひとと動物のかかわり研究会リレーエッセイ
 人と動物のより良い環境作りを目指して、いろいろな思いをみんなで綴っていく、リレー・エッセイのページを作りました。このページで「ひと」と「ひと」の輪を広げていこうと思います。
 リレー・エッセイのルール: このページに執筆を依頼された方は、執筆後、次にバトンを渡す方を見つけます。そして、研究会の活動を伝え、エッセイの執筆をお願いします。エッセイのテーマは自由です。日常の生活で思うことや伝えたいことを綴って下さい。

−理科の授業で−


 農業高校で理科を教えています。農業といっても生徒のほとんどは将来農業に従事することを目的としておらず、どちらかといえば、学力的に普通高校が無理で、やむなく選択してきたという生徒が多数です。自然豊かな環境にありながら、動物や植物に対しての興味や経験、知識が乏しいことに大きなギャップを感じながら日々過ごしています。
 先日、脊椎動物についての学習をしていたところ、ある女子生徒に「先生、カメは動物じゃないよ」と言われてしまいました。理由を聞いてみると、カメはハ虫類だから虫だ、と言うのです。しばらく何を言っているのか分かりませんでしたが、要するに彼女は2つの思い違いをしているということに気づきました。まず、ハ虫類は虫(昆虫)であるということ、「虫」とついているからでしょうか。そして、昆虫は動物ではないということ。彼女の中で動物とはウシやウマ、イヌやネコといったほ乳類だけを指すのです。さらに、追求して、探っていくと、どうも彼女の動物の定義は1)温血である 2)あわせて4本の手足がある 3)毛が生えている という条件を満たしているもの、この条件を満たす生き物は人間と同じ(に近い)「動物」である、ということです。そして「動物」以外の動く生き物は「虫」、「魚」として分類しているようです。
 生徒達に、動物を正確に分類させる気はありません、国語的にはクモだってムカデだってダンゴムシだって虫で良いと思いますし。国語辞典を引くと、湧いて出る小さな生き物=虫という説明になっています。でも、カメは、虫じゃないなぁ、彼女は一応高校生ですよ、今までの16年間ずっとその定義で不自由なく生きてこられるんだ、ということに、理科という教科の無意味さを感じた気がして、かなり力が抜けてしまいました。
 しかし、学術的な知識はなくても、実際に動物を見たり、触れたり、育ててみたりすると、多様な生物の間に、形態、生理的機能上の共通項や、相違点のようなものを感じることができます。言葉や写真でしか知らないから、ハ虫類=虫という発想になってしまうのではないでしょうか。魚だって切り身や寿司ネタとしてしか知らないものも多いと思います。また、言葉や写真だけでは、人間と同じ生死の運命を持つひとつの生命体として感じることも難しい。「ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、みんなみんな友達なんだ〜」これはいったい何のこと?今の生徒の多くはこう感じています。
 ある年、カイコを飼育して、まるまると太った5齢幼虫をざっくりひとつかみ(20匹ほど)教室に持って行ったことがあります。おもむろにそれを白衣のポケットから出してみせると「ギャー!!」と、男子生徒まで、ベランダの方に逃げて行ってしまいました。桑畑の点在する、かつては養蚕も行われていた田舎の高校なのですが、意外に初めて目の当たりにする生徒がほとんどで、さらに虫にさわったこともない、というものも数名おり、それはもう大パニックでした。しかし、カイコが自然界では全く無力で、完全に家畜化された生き物であること、食物は桑のみで全く汚くはない等々、その生態について話していくと、さわってみたい、飼ってみたいという生徒も出てきました。やはり現物の力は大きい。こんな感じで、なるべく生の生き物に触れさせ、人間との関わりについて学んでいけるよう心がけています。それが、理科教員に課された使命であると思って、頑張ってやっていきたいと思う今日この頃です。 

                                                                    Yoko

【自己紹介】

ペンネーム:Yoko
高校教師。2児の母。子育ても仕事も頑張っています。

 

サイトマップ リンク

個人情報について

お問い合わせ top